2007-10-05

城よしみ Yoshimi Jo 1969

「薔薇の葬列」Funeral Parade of Roses (1969 ATG 松本俊夫)より
『ベッドで煙草を吸わないで』(1:39)



スタンリー・キューブリックのフェイヴァリット作なんだそうだ。前エントリーの「時計じかけのオレンジ」(1971)には随所にその影響があるとのことだが、いつも映画をボーッとしか観ていないせいで、主人公のつけ睫毛ぐらいしか似ているところを見つけることができない。

松本俊夫といえば、実験映画の大御所であるとともに、映画界きっての理論家で「映像の発見」「映像の探求」「映画の変革」などの著書もある。どの本の記述かは忘れたが、映像の価値(というか映像作家の志向性といったほうが適切かな)を「モンタージュ」と「フォトジェニー」の2要素に行き着くということを言っていて、読んだ当時はなるほどと思ったものだが、いまは「音」「台詞」「音楽」を除外した論で一定の有効性しかない、と音偏重派の人間としては反論したいところだ。

その実験映画の「俊英」が手がけた初の劇映画が本作。ピーターこと池畑慎之介のデビュー作でもある。キワモノ的なゲイボーイの世界に「オイディプス神話(エディプス・コンプレックスはここからとられた概念。ピーター演ずるエディの役名もこれに由来する)」を持ち込んだり、ボードレールジョナス・メカスを引用するなどペダンティックなつくりの映画だ。また時制が入り組んだ構成は、アンゲロプロスジャームッシュ、さらにはタランティーノの映画を観てしまった現代の観客には普通のことだが、本作封切当時には新鮮だっただろうと想像する。

『ベッドで煙草を吸わないで』は、ここ数年来関心を持っている平岡精二
の曲だと思い込んでいた。岩谷時子作詞、いずみたく作曲、沢たまき歌で1966年に出た曲だったのね。どうしても旗照夫の『あいつ』やペギー葉山の『爪』と世界がかぶる曲なのだが。

あ、そうそうピーターの左の男は蜷川幸雄です。自分の芝居にはダメ出ししないんですね。

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